昔から私たちの身近にある日用品、石鹸。「なにげなく使っているけれど、そういえば実はどんなものなのかよくわからない」「原料はなんだろう」「ハンドソープやボディソープと違うの?」。感染症対策で手洗いの重要性が再確認されるいまこそ、石鹸についていまいちど考えてみましょう。
本記事では石鹸の基礎知識を簡単にご紹介します。
石鹸の基本を知り、自分の肌や目的に合った石鹸を選びましょう。
石鹸っていったいなんだろう?
石鹸とは?
石鹸は脂肪酸とアルカリでできた物質です。原料は動物や植物からとれる油脂。これらの油脂をアルカリと混ぜ合わせて加熱し、化学反応をさせて製造されています。
石鹸にもいろいろなタイプがありますが、固形・粉状のものは脂肪酸ナトリウムで作られ、主に浴用石鹸や洗濯石鹸等に使われています。液体・ジェル状のものは脂肪酸カリウムで作られ、ハンドソープや台所用液体石鹸として利用されています。
また、石鹸は界面活性剤の一種です。界面活性剤は水と油のどちらともなじむ性質があり、本来ならば反発しあうはずの両者を混ぜあわせる働きをします。石鹸が髪や身体の皮脂汚れを落とすことができるのは、この界面活性剤の働きによるものです。
石鹸の歴史
固形石鹸が日本で製造されるようになったのは、明治3年頃のこと。当時の石鹸は、牛脂とナスの灰汁を飴状にしたものをハマグリの殻にいれて売ったとか。その後、横浜で民間の石鹸製造のはじまりとなる「堤礒右衛門石鹸」が登場し、明治初期には石鹸製造業が数多く起業されました。石鹸は文明開化・産業振興のシンボルのひとつであり、化学工業の出発点であったのですね。
一般の人も安価に石鹸を入手できるようになったことで、洗顔・入浴・洗濯に石鹸を使うことが普及していきます。石鹸のもつ“洗い流す”という意味から、快気祝いや香典返しなどの贈り物としても定番になり、暮らしに欠かせないアイテムとして今日まで至っています。
石鹸にはどんなものがある?
石鹸の種類
石鹸の種類は本当にさまざま。経済産業省の統計では、洗浄剤の種類について、身体を洗うものと身体以外の物を洗うものとに分類されています。
そのうえで、身体の洗浄剤を皮膚用と頭髪用に分類し、皮膚用を“浴用固形石鹸”、“手洗い用液体石鹸”、これらと別に洗顔石鹸やボディソープについては“洗顔・ボディ用身体洗浄剤”として表示しています。この他の衣料用、台所用の洗浄剤は、石けん(洗濯用石けんなど)とひとくくりにしています。
また、一般的に身体用には“ボディソープ”、手洗い用に“ハンドソープ”という名称も定着しています。これらは用途や見た目の形のほか、製法や化学的な特徴をもとにつけられた呼び名も混ざっていて、法律によっても対象定義が異なるのですこし複雑です。
石鹸の添加物
石鹸はいろいろな香りや色が楽しめるもの、美肌や殺菌効果を謳ったものなど、実にたくさんの商品があります。油脂とアルカリから製造される石鹸の主成分(石ケン素地)に、さらに添加物を加えることで、目的に合わせた多種多様の石鹸が製造されています。
添加物というと体に悪いようなイメージもあるかもしれませんが一概にそうとも限りません。グリセリンや植物性オイルなどの保湿成分であったり、殺菌・除菌を目的とした殺菌成分や、肌荒れ防止のための消炎成分など、薬用としての効果があるものもあります。
無添加石鹸とは?
無添加石鹸とは、添加物を加えていない石鹸のことをいい、洗浄成分が石鹸だけでできています。身体洗浄用の商品であれば、成分に“石ケン素地”あるいは“カリ石ケン素地”と表記され、家庭用品であれば、品名に“純石けん分”と表記されています。また、一般的には、石鹸成分のみで作られている石鹸を「純石鹸」と呼んでいます。
無添加石鹸は基本的に合成成分を含まないので、肌への刺激も少なく安心して使うことができるでしょう。ただ、防腐剤、着色料、蛍光剤、香料といったある特定の合成成分を含まないことを“無添加”と謳っている製品もあり、その場合、グリセリンや植物性オイル、ラベンダーやグレープフルーツ等の精油が含まれていることも。好みの香りや使いごこちを選べるのは魅力的ですが、無添加と書かれていても添加物が一部含まれる場合もあることは心に留めておくとよいでしょう。
粉、液体、固形の違いは?
液体石鹸も固形石鹸も、汚れを落とすという役割はおなじ。原料である油やアルカリ成分を選ぶことによって様々な石鹸を作ることができます。
液体石鹸は、固形石鹸を溶かしてできただけのものではなく、固形、液体とそれぞれ違う形状にするために、原料の選定や作り方を変えて作られています。使いやすさや好みといった商品特性に合わせて使い分けてみましょう。
石鹸と合成界面活性剤
石鹸と合成洗剤
石鹸と合成洗剤の違いをご存じですか?
両者はともに汚れを落とすものではありますが、実はまったく別のもの。成分や製法もぜんぜん違います。
合成洗剤は石油などを原料とし、化学合成で作られた合成界面活性剤が成分となっています。石鹸がおよそ5千年ともいわれる長い歴史のある一方で、合成洗剤は第一次世界大戦の頃に作られた比較的新しいもの。強力な洗浄力をもちますが、複雑な化学合成を経て作られた本来自然界には存在しない物質でもあります。
石鹸も合成洗剤も、人々の衛生環境を良くしていることは確かですが、合成洗剤は人体や自然への影響がたびたび議論になっています。洗浄剤を選ぶ際には、それぞれの特性も頭に入れたうえで、目的に合うものを選べるとよいですね。
石鹸と合成界面活性剤の見分け方
石鹸と合成洗剤は、液体か個形かといった形状や使用用途では見分けることが難しいもの。たとえばボディソープやハンドソープには、石鹸か合成洗剤かを区別する品質表示がありません。パッケージをよく見ると、石鹸であれば身体用でも洗濯用でも「石ケン素地」「カリ石ケン素地」「洗濯用石鹸」などの表記があります。それ以外の成分や名前が表記している場合は、合成洗剤の可能性があるので、まずは、表示をチェックしましょう。