酸性?アルカリ性?肌にやさしい石鹸を考える

酸性?アルカリ性?肌にやさしい石鹸を考える

ドラッグストアへ足を運べばいろんなタイプの洗浄料がありますね。CMでよく見かけるボディソープや無添加石鹸、良い香りの固形石鹸など…選択肢がいろいろで迷ってしまうことも多いのではないでしょうか。よく、“弱酸性で洗おう”といったフレーズも聞きますが、肌にとっては本当に弱酸性が一番良いのでしょうか?

石鹸選びに悩んでいる方へ、石鹸やボディソープの性質を中心に、基本的知識を解説します。

石鹸やボディソープの基本的な性質を知れば、あなたや家族の肌に合わせた商品を選ぶことができますよ。



石鹸やソープを選ぶそのまえに

水溶液の性質

石鹸やボディソープについて考えるまえに、水溶液の性質について解説します。

水溶液とは、酸性・中性・アルカリ性のいずれかの性質を持ちます。小学生の頃、リトマス紙を使った実験をした記憶がある人も多いでしょう。

たとえば、お酢や果汁といった酸っぱい味のするものは酸性。灰汁(あく)のような苦い味のするものはアルカリ性です。そして、酸性とアルカリ性の中間の性質のものを中性といいます。

酸性、アルカリ性の度合を表す数値をpHといいます。0~14の数値のうち、pH7が中性の値です。pH7未満が酸性、pH7より上の数値のものがアルカリ性となります。

酸性のものには、お酢やクエン酸(pH2)、塩酸(0pH)があります。アルカリ性は、水酸化ナトリウム(pH14)、セスキ炭酸ソーダ(pH10)等がその代表例です。

さてそれでは、人間の肌はどんな性質を持つのでしょうか。


人間の肌は弱酸性?

人間の肌は弱酸性です。生後まもない赤ちゃんの肌はほぼ中性ですが、すぐに酸性に変わります。

肌が弱酸性である理由は、自分で自分の皮膚を守るため。自然の殺菌作用で様々な細菌の侵入を防ぎ、皮脂膜が薄いクリームのような役目をしてうるおいを保ちます。肌が弱酸性であることによって外部からの刺激や雑菌の繁殖を抑えようとしているのです。

ところが、人間の肌は年齢と共に再び中性に近づいていきます。そうなると自然の殺菌作用は弱まり、肌トラブルが起こりやすくなります。肌荒れや炎症が起きた肌は、中性に近いpH6という数値になってしまうこともあります。だからスキンケア商品には、正常な肌の状態に近い弱酸性のものが多いのですね。




弱酸性とアルカリ性

さて、肌にやさしい洗浄剤を選ぶために石鹸やボディソープの性質についてみていきましょう。


石鹸は弱アルカリ性

石鹸は、動植物の油脂とアルカリ(苛性ソーダ=水酸化ナトリウムまたは苛性カリ=水酸化ナトリウム)を攪拌しながら加熱し、ケン化反応という反応を起こさせて作ります。そのため、石鹸は弱アルカリ性。からだに使う石鹸はpH10前後です。


弱アルカリ性の石鹸の特徴

弱アルカリ性の石鹸には、弱酸性の洗浄剤と比べて油汚れを落としやすい特徴があります。たとえばクレンジングで落としきれなかったメイクなど、汚れをしっかり落としたい時などに適しています。


弱アルカリ性の石鹸は、肌の酸性汚れに反応してしっかりと汚れを落とすことができます。角質の肌サイクルが促され、表面にある古い角質はアルカリ性によって柔らかく、剥がれやすくなります。

石鹸は水で薄まるとすぐに洗浄力がなくなり、簡単に洗い流すことができます。水で洗い流せば肌の表面に洗浄成分が残ることもありません。

正常な人間の肌は本来もっている中和能力によって、新しい皮脂が分泌され、弱アルカリ性の石鹸で洗ってもきちんと弱酸性に戻ります。ですので、弱酸性の肌に弱アルカリ性の石鹸を使用しても影響はありません。


一般的なボディソープは弱酸性

一般的なボディソープや洗顔料には、“弱酸性”と謳っている商品があります。これらの弱酸性の洗浄剤は、石鹸とは全く別のもの。石油や天然油脂を原料とし、複雑な化学合成を経て作り出された合成界面活性剤からできています。

弱酸性の洗浄剤の特徴は、弱アルカリ性の石鹸と比べるとやさしく汚れを落とせるのがポイント。肌のpHに近いため、刺激は少なくマイルドに洗いあげます。

ただし注意すべき点もあります。合成界面活性剤は水で流しても落ちにくく、丁寧にしっかりとすすがないと成分が肌に残ってしまうことがあります。すすぎ残しは時に肌荒れの原因となることも。弱酸性であること自体は肌に優しくても、使い方によっては肌トラブルが起きてしまう可能性があるのです。


お肌に合った洗浄料を選ぶには?

なにがベストかは状況によって異なる

肌のpHは状態によって変わるといわれています。オイリーな状態の時は酸性側に傾き、肌のバリア機能が壊れている時はアルカリ性に。たとえば、汗を多くかきやすい夏場は、肌がオイリーで酸性の状態になりがち。アルカリ性の石鹸でしっかり汚れを落とすのがおすすめです。

乾燥する秋冬は、肌が乾燥してバリア機能も乱れがちです。肌が弱酸性に戻る力が弱っている可能性もあるため、弱酸性の洗浄剤でやさしく洗浄するのが良いでしょう。

 

界面活性剤とは

界面活性剤という言葉を聞いたことがありますか。界面活性剤は、界面(物質の境の面)にはたらきかけて、その性質を変化させる物質のことを指します。本来、混ざることのない水と油をつなぐことで、汚れを落とす力があるのです。石鹸もこの界面活性剤のひとつです。

界面活性剤には、天然のものと、人工的に作られた合成界面活性剤があります。弱酸性の洗浄剤はこの合成界面活性剤で作られていることがほとんど。合成界面活性剤には泡立ちの良さなどのメリットがありますが、お肌に影響を与えて肌トラブルを起こしかねないというデメリットもあります。


それぞれの肌に合った選択を

肌にやさしい石鹸とは、一言では語れないもの。弱アルカリ性か、弱酸性かといった性質だけで判断することは難しいでしょう。

自身の肌の性質や状態にあわせて、そのとき適したものを見極めることことがお肌に合った洗浄剤を選ぶポイントです。